こんばんは、酔いどれ麻酔科医です。
昨日までは日常生活において考えるべきコロナウイルス感染症に対する注意点についてお話してきました。とにかく大切なのは「接触感染、飛沫感染をどう避けるか」ということです。
ここで改めて、接触感染、飛沫感染、空気感染について触れておきます。
接触感染ー最も重要かつ頻度の高い感染経路。接触には直接接触感染、間接接触感染の2形態がある。直接接触感染は、感染者に接触して微生物が直接伝播すること。一方、間接接触感染は、微生物に汚染した物や人を介して伝播すること。
飛沫感染ー感染者が咳やくしゃみ、会話などで放出した微生物を含む5μmより大きい飛沫が感受性のある人の口腔粘膜、鼻粘膜、結膜などの粘膜に付着することによって感染すること。
空気感染ー微生物を含む5μm以下の飛沫核(飛沫から水分が蒸発したもの)が空中を浮遊し広範囲に拡散。それを感受性のある人が吸い込むことによって感染すること。
それぞれ、この様に説明されます。さて、マスクと聞いて、皆さん空気感染、飛沫感染予防のことを思い浮かべたかもしれません。でも実はマスクは接触感染にも大きく関与していますし、むしろそれが皆さんにとって大きな大きな抜け穴になっている可能性があります。
まず、皆さんはマスクの性能ってご存知ですか?「アベノマスク」がどうして意味がないと言われるのか分かりますか?
衝撃的な事実をお話します。実は日本には医療用マスクの性能規格基準というものが存在しません。よってアメリカにあるASTMという団体が設定した基準を採用している場合が殆どです。そして、もう少し踏み込むと、この性能基準もあくまで「マスクそのものではなくて、フィルターの性能」の基準ですから、マスクを正しく装着しなければその効果を最大限発揮する事は出来ません。
正規品のマスク(という表現が正しいかどうか分かりませんが)は基本的にこの基準を採用していますが、個人的に怖いのは、全く知らない某外国製のものが果たしてこの基準をクリアしているのか・・・実は非常に心配だったりします。そういったものが驚く様な高値で取引されている現状を考えると本当に心配です。
話を戻します。ASTMの基準に関しては省略しますが、基本的にその基準をクリアしている正規品のマスクについてお話しますと、
サージカルマスク→飛沫感染予防目的に装着するもの
N95マスク、DS2マスク→空気感染予防目的に装着するもの
と分類できます。新型コロナウイルスは基本的には空気感染しない(エアロゾルに関しては判断が難しいところですが・・・)ため、飛沫感染予防に装着するものとしてサージカルマスクのお話をしようと思います。
まず、マスクには表裏、上下があることを皆さんはご存知ですか?たまに街中で「えっ!?」と思うマスクの付け方をしている人を見かけます。あるいは、マスクの中でも「これ、ちゃんと基準守れてるマスクなの?」と思う様なマスクが実際あります(当たり前ですが、院内のマスクではありませんが市販のマスクで感じたことがあります)
まずマスクの上下に関してですが、ノーズピース(針金の様なものが入っている部分)がある方が上(鼻側)になります。そしてマスク表面に折り目がついていると思いますが、注意してしください。文章にするのが非常に難しいので写真でお見せしますが、表裏を間違えると折り目に埃や粒子などが溜まってしまい逆効果です。
マスクを手に取ったら、まずは2つ折りにします。ノーズピースをしっかり山折りにするということです。鼻の形にフィットさせるために必要です。これがまず非常に大切です。しっかり鼻周りの隙間を埋め、そして顎周りの隙間を埋めることでマスクの効果を最大限発揮出来ます。
つまりノーズピースがないマスクや、あまりにサイズが小さくて顎周りが隠せないマスクは、マスクの効果を発揮することができません。
これが「アベノマスクが何の意味もない」と言われる原因です。布マスクに関しては、更に目が粗すぎて飛沫感染予防にすらならないという説もありますが。。(布マスクは何だったら感染リスクを増加させるという論文すらあります)
マスクを装着して、最後にしっかり鼻の横を抑えてフィットさせます(隙間を埋めます)。これで完成です。
さて。街中でよくこういうマスクの付け方をしている人を見ます。先日散歩していたら、交番の中にいた警察官がこのマスクの付け方をしていて、愕然としました。思わず中に入って指導しようか迷いました・・・テレビ番組の出演者でもこのマスクの付け方をしている人を見ませんか?ニュース番組で政府関係者がこれをしていた気もしますが・・・
恐らく、これらの付け方をしている人はマスクを装着していると息苦しくなってしまって・・・ということだと思います。
ですが、上の写真では鼻が思いっきり出ているため鼻からの感染は全く防げませんし、下に関しては最早逆効果でしかありません。マスクを顎の下にずらすと、それまでマスクで隠れていなかった皮膚にマスクの内側が触れますよね?そこに付着していた微生物がマスクの内側に付着します。それを再度装着して呼吸すれば・・・想像するだけで恐ろしくありませんか?感染待ったなし、ですよね。更に言えば、顎マスクを元に戻す時、どこを触りますか?手がウイルスだらけになりますね・・・
マスクは正しく付けて、初めて効果があるので正しく装着しましょう。こちらです。
さて、マスクを外す時にも注意が必要です。よく、マスクをこの様に外そうとする方がいますが、絶対にNGです。マスクの表面は既に汚染されていますよね?それを素手で触ってはいけませんよね。マスク表面を触った時点で手にはウイルスが付着します。帰宅してこの後すぐに手を洗えるならともかく、外出先でこの外し方をしてそのまま壁や机や、あるいは食器などを触ったら・・・あっという間に汚染が広がります。接触感染の危険性が激増しますね。
正しい外し方は、この様にヒモ部分を指で引っ掛けて外す方法です。勿論、このヒモ部分が汚染されていないとも限らないのですが、少なくともマスク前面と比較すれば汚染の度合いは少ないです。それでもマスクに触った後は必ず手洗い、手指消毒を心がけましょう。
いかがだったでしょうか。本当なら動画で説明したかったのですが、すみません、機材不足と日常診療しながらなので時間がなく・・・分かりづらかったら申し訳ありません。ご質問などあればいつでもコメントしてください。(写真のヒゲはごめんなさい、当直明けで髭を剃れず・・・お見苦しいのは重々承知しております)
最後に、こうした未曾有の事態でも必ず商売する悪人が存在します。布マスクの高額販売、未認可?得体の知れないマスクの高額販売、あるいは悪人ではないでしょうが、全くエビデンス(科学的根拠に基づいた証拠)のない布マスクの作り方などの動画紹介や、いよいよ謎な「アロマオイルを滴下して抗ウイルス効果をUP」etc.・・・
ちなみに布マスクをするくらいなら、持っているサージカルマスクをアルコール消毒して再利用する方が効果があると言われています。
皆さんには、ぜひ誤った情報や悪意のある情報に惑わされない様にして頂きたいと思っています。
僕が急遽このブログを始めた理由の一つでもあります。
さて。明日はいよいよ、もしかすると皆さんが今一番気になっていて、しかも正しい情報が全く伝わっていないPCRについてお話しようと思います。では。
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