こんばんは、酔いどれ麻酔科医です。
5/4に安倍首相が緊急事態宣言の延長を発表しましたが、その会見で「新しい生活様式」という言葉が出て来ました。そして厚生労働省HPに、その「新しい生活様式」の実践例が挙げられており、これを基に地方自治体HPにも明記される様になりました。
正直、内容的には「新しさ」は感じず、基本的には「3密を避ける」という話の延長線上のお話だと感じました。
3密を避ける意味については過去に述べました。ですが、改めてこの「新しい生活様式」について、考えてみたいと思います。
それぞれの項目ごとに、それが出来るのかどうか、出来なかった場合どうすれば良いのか、というところまで考察していこうと思います。とてつもなく長くなってしまうので、何回かに分けてお話出来ればと思っています。
(1) 一人ひとりの基本的感染対策
感染防止の3つの基本:①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗い
・人との間隔は、出来るだけ2m(最低1m)空ける。
ある程度は出来そうです。ただ、家の中では物理的に難しいかもしれません。また、介護の現場では全く無理な話かもしれません。自力で動けない方に対してどうしたら接触せずに介護出来るのでしょうか・・・難問です。
敢えて解決策(となるか分かりませんが)を挙げるとしたら、帽子、ゴーグル、マスク、長袖のビニールエプロンを着用して介護を行い、終了後は速やかに捨てて手洗い、可能ならシャワーも浴びる・・・でしょうか。
でも、このビニールエプロンは当たり前ですが通気性が悪いため、短時間の着用でもあっという間に汗だくになります。まして介護の様な重労働だと・・・大変としか言いようないですね。
・遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ
これはなかなか難しい問題です。特に大人の場合、仕事が終わってさぁ羽を伸ばすぞ、と言っても夜ですから、公園に行くわけにもいきませんよね。また、屋内のレジャー産業は軒並みダメージを受けてしまいそうです。映画館、カラオケ、ボーリングなどでしょうか。ゲームセンターもそうですね。
・外出時、屋内にいる時や会話をする時は、症状がなくてもマスクを着用
これは唯一、屋外を一人で歩いている時のみマスクを着用しなくても良く、それ以外では可能な限り常にマスクを着用すべき、ということでしょうか・・・
それとも家の外に出た際に、屋内または誰かと会話している時、という意味でしょうか。
でも、確かに家の内外問わず、マスクを着用することは飛沫感染予防にとっては意味があります。ただし。正しいマスクの使用方法が理解、徹底されていれば、という仮定付きですが。
マスクの正しい使い方に関しては過去の記事で述べたので、良かったら見てください。
・家に帰ったらまず手や顔を洗う。出来るだけすぐに着替える。シャワーを浴びる。
手や顔を洗うのは必ずすべき感染予防策です。特に手は家の中で何かを触る前に洗いましょう。
シャワーも確かに浴びた方がより安全なのは間違いないですが、水道代、ガス代などが大変なことになりそうですね・・・
・手洗いは30秒程度かけて水と石鹸で丁寧に洗う(手指消毒薬の使用も可)
まず、手洗いに30秒程度かけるというのはどういうことか。
これは、手洗いの時間や回数と残存ウイルス量の関係にあります。
手洗いなし・・・ウイルス量を約100万個いると仮定します。
流水手洗い15秒・・・約1万個(1%)
石鹸、ハンドソープで30秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐ・・・数百個(0.01%)
石鹸、ハンドソープで60秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐ・・・数十個(0.001%)
石鹸、ハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐ。これを2回繰り返す・・・数個(0.0001%)
とされています。流水手洗いのみでもウイルス量はかなり減少しますが、やはり石鹸、ハンドソープを使用してしっかり手洗いすることでウイルス量を相当量減少させることが出来ます。
ただ、僕ら医療者の手洗いの考えとしては、手洗いは目に見える汚れを落とすもの、そして手の消毒は目に見えない菌やウイルスを殺す目的で行うものです。
ですから、手洗いする際はまず流水手洗い、そしてアルコールスプレーなどで手指消毒を行うのです。
そういう訳で、この「手指消毒の使用も可」と言う一文には違和感があります。むしろ積極的に併用してください。
*高齢者や持病のあるような重症化リスクの高い人と会う際には、体調管理をより厳重にする。
これに関しては当然です。むしろ、今回の新型コロナウイルス感染症に限った話ではありません。
と、ここまでに関してまとめますが、ここに書かれていることは結局どの様にして接触感染、飛沫感染を予防していくか、ということです。
外出する際にはマスクを着用し飛沫感染を予防する。人と話す時も同じくお互い飛沫感染しない様にマスクをする。距離を保つのもそうです。
そして、しっかり手洗いを行うことは接触感染予防の最重要策です。特にウイルスは粘膜を通して感染します。みんな無意識に顔や目を触ったりしますよね。口腔内も粘膜だらけです。ですから手を洗う必要があるのです。
介護の問題や、或いは屋内レジャーの問題に関してはまた今度。
さて、続けます。
移動に関する感染対策
・感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える。
これ、仕事でどうしても必要が・・・という時は仕方ないでしょう。不要不急では、ということでしょうか。実はこれ、今までも特に途上国から帰国した際に検疫で引っかかったりしますよね。そこまで厳重なチェックはしないのでしょうけど、国内版といったところですかね。
不要不急で、ということなら守るべき事項でしょうか。
・帰省や旅行は控えめに、出張はやむを得ない場合に。
上の条項の補足、といった感じなのでしょうけれど、どうでしょう。感染が流行していないところから流行していないところへの移動は?とかツッコミが入りそうですが。
とにかく、基本的に不要不急の移動はできるだけ避けましょう、ということですね。
ただ、この条項は旅行業界や観光業界には大ダメージですね・・・
個人的には、しっかりと感染予防策を講じられるのであれば大丈夫なのでは?と感じてしまいます。
特に、日本は観光大国です。現状ではとても海外の感染が流行している国からの来日客は避けたいところですが、世界的にある程度落ち着いたらあまり制限すべきではないのではないかと思います。
・発症した時のため、誰とどこで会ったかをメモにする。
これは、このメモを誰に伝えるのかによっては大きな問題になりそうですね。まぁ、個人的には仮に自らが感染したとしたら、逆算してそのメモに書かれた相手に伝えて用心してもらう、という使い方以外には使うべきでないと思います(例えば行政だったり保健所だったりに伝えるのは違うかな、と)。
プライバシー権の侵害に当たってしまう可能性がありますから・・・当事者同士がきちんと伝え合うことが出来れば良いと思います。
実際、少なくとも僕ら医療者が感染者の診療を行う際に、いつ誰とどこで何をしたか、という様なことまではあまり聞いていません。
周りに症状のある方はいますか?程度の話は聞きますが・・・
・地域の感染状況に注意する。
これは完全にこの移動の最初の条項の補足ですね。その通りです。
今は感染状況のロードマップなどもありますから、それをしっかり確認することはとても大切だと思います。
この移動の条項に関しては上でも述べましたが、とにかく旅行、観光業界の問題が大きそうです。
僕らは不要不急の移動は控えるべき、というのはこれからも変わらないと思います。ただ、僕の考えを言いますが、趣味は「不要」ではなく「必要」と感じます。例えば趣味が旅行の方は、旅行先が感染が流行している場所でないかをチェックし、感染予防策を十分に講じたなら旅行して良いのではないかと思います。
今日はここまでにします。いかがでしたでしょうか。個人的な感想としては、これまでのコロナ対策と大きな違いはありません。大切なのは、どの様に接触感染、飛沫感染予防策を講じるかですね。それは、行政レベルで講じるのは勿論、やはり個人個人の自覚、予防が大切だと強調させて下さい。
続きはまた明日。では。
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