日常生活に潜むコロナウイルスの危険

こんにちは。酔いどれ麻酔科医です。

昨日はなぜ3密を避けなければならないかという事についてお話させて頂きました。今日は昨日の終わりにも言いましたが、3密を避けていてもコロナウイルスに感染する危険性がある、という事についてお話したいと思います。

その前に軽く昨日のおさらいをしますが、コロナウイルスの感染経路としては大きく3つあり、中でも接触感染、飛沫感染が主な経路となることは理解して頂けたと思います。

では、3密を避ければ接触感染、飛沫感染のリスクは無くなるのかというと、実はそんな事はないという事について具体例を挙げながらお話していこうと思います。

例えば。外食を避け食事は自宅でのみされている方でも、食材調達はどうされていますか？スーパーやコンビニに行かれる方は少なくないのではないでしょうか。

スーパーで長蛇の列が出来ている事は問題になっていますよね。それはもちろん密集、密接の危険性があるからなのですが、では入場制限しているスーパーは大丈夫なのかというと、必ずしもそうではありません。

例えばコロナウイルスを保菌している人がいます。その人が何となく商品を触って、でもやっぱり買うのをやめたと言って陳列棚に戻します。すると、その商品や周りはウイルスに汚染されます。そこを触った人の手にはウイルスが付着しますよね。

また、最近は会計の際に店員さんとお客さんの間には飛沫感染予防のシートが張られ、更には店員さんが手袋をしている所もあります。しかしその手袋、お客さん毎に交換していますか？していませんよね？そうなると、当然ウイルスが手袋に付着し、その手を介してあっという間にウイルスが広がります。

お客さんの中にはマスクをしていない人も既に見受けられます。その人たちが商品の前で喋ると、口から出た飛沫が気付かない間に商品に付着しますよね。それを触ればウイルスはその手に移動します。

では、厳密にウイルスが付着する危険を完全には除去出来ないの？というと、「一応」そんな事はありません。具体的に言えば、まず店内を全て完全に清掃、消毒します。そして、入店するお客さん全員にマスク着用を義務付けます。更に、入口と出口に手指衛生用のアルコールを設置し、手指消毒を義務付け、更にその後ゴム手袋を装着してもらいます。
そして、出口にはそのゴム手袋を捨てる蓋つきゴミ箱を用意(足で蓋を開閉出来るもの)し、更に再び手指消毒をさせてから退店させる・・・

って、ここまで読んでいただいて、どうでしょう？全く現実的でないことがよくご理解いただけたかと思います。そうなんです、ハッキリ言ってとてもじゃないですが無理です。
でも、本当に厳密に感染防御策を講じようとすると、ここまでしなければならないということをわかって頂きたいと思って、お話させて頂きました。

ここまで読んで、ちょっと待てよ！と思った方もいらっしゃるかと思います。そんなことをしているお店が全くないにも関わらず、そこまで爆発的に感染者は増えていなくない？と。

そうなんです。実は今議論されていることとして、この新型コロナウイルスの感染力は決してとてつもなく強いという訳ではないのでは、ということがあります。

布製品などはすぐ乾くので置いておいて、パッケージングされた商品や、あるいはプラスチック、金属など表面が滑らかなものにコロナウイルスが付着すると、そのウイルスは大体2-3日間生存します。1週間以上生存したという報告もあります。ただ、それを触ったからと言って、すぐに感染するわけではないということが重要です。

基本的にコロナウイルスは健常な皮膚を通して感染する事はなく、粘膜を通して感染します。つまり、例えば誰かの喋った飛沫に付着している、あるいは中に潜んでいるウイルスを吸い込んだり、あるいはウイルスが付着した手で目や鼻、口と言った粘膜が存在する部分を触る事で初めて感染するという事です。

ですから日常生活において大切なことが2つ。

1つ。食事においては、出来るだけ話をしないこと。要は面と向き合って喋りながら食事をすることで、飛沫感染のリスクは激増します。しかし同じ方向を向いたり、距離を空けて、かつ出来るだけ手早く食事を済ませることによってそのリスクは軽減します。

2つ。とにかくこまめに手洗いすること。特に外出から帰った際、食事する前、何か顔などを触る前、トイレに行かれた際には必ず手洗いしましょう。流水手洗いだけでも効果がありますが、やはり石鹸を使用したり、あるいはアルコール消毒することによってコロナウイルスの膜を破壊出来るので、そちらの方がより良いでしょう。

こうした観点から一つお願いがあるとすれば、ご家庭がある方は特に小さなお子さんを連れてスーパーなどへ行くのは絶対にやめてください。

小さなお子さんは気付かないうちに様々な場所を触ります。そして、気付かないうちにその手を口の中へ入れたり鼻を触ったりしていませんか？上でお話したことの真反対のことをしてしまいがちです。
大切なお子さんを感染から守るためにも、お父さんお母さんはぜひ肝に命じて頂きたいと思います。

我慢は一時で済みますが、後悔は一生ついて回ります。

ここまでお話しましたが、実は今日僕がお話した事は全て皆さんが当たり前にされている事だったりします。日本人の感染が欧米と比較して少ないのはBCGを接種しているからなど様々な意見がありますが、個人的にはそれだけでなく、日本人が綺麗好きだからだと思っています。外出先から帰宅したら手を洗う、トイレから出たら手を洗う、これって結構当たり前じゃないですか？ただ、改めて一つ一つ意識して、大切にすべきだという事は間違いありません。よりこまめに手を洗うことが大切です。

明日はこの話に関連して、最近問題となっている家庭内感染についてお話しようと思います。では。