ワクチンのお話

こんばんは、酔いどれ麻酔科医です。

昨日はコロナ治療のお話、主にアビガンやレムデシビルといった抗ウイルス薬について話しました。
ただあまりに長くなり過ぎてしまったので、急遽分割して今日はワクチンのお話をしたいと思います。

先日ファイザ社ーがドイツのバイオケミカルベンチャー企業と共同開発した新型コロナウイルスワクチンの臨床治験を早くも始めるというニュースが出ました。これは異常なまでの早さと言えますが、どうなのでしょう。

レムデシビルに関しても、重篤な肝機能障害や腎機能障害などの副作用が出現する危険性があるのですが、そちらの評価についてもやや甘い印象があります。ですがアメリカの場合、感染者数が130万人弱、死亡者も8万人近くに増加しており、かなり切迫した状況となっています。恐らくデメリットよりメリットにフォーカスしたのだと思います。

これが日本とアメリカを含む世界との大きな違いなのですが・・・その辺りのお話は後日改めてしようかなと思います。

さて、まずはワクチン全体のお話を少し。

ワクチンって、そもそも何なのかご存知でしょうか。平たく言うと、ウイルスや細菌といった病原体やその毒素を化学処理したものです。そしてそれらを人に接種することによって、そのワクチンに対する免疫反応を人為的に引き起こさせ、抗体を作らせることが目的です。人間の体は「異物」を感知すると、それと戦うために免疫反応が起きます。その能力を利用しているのです。免疫を獲得すると、その病原体に感染しにくくなったり、仮に感染しても症状を抑えてくれる役割を果たします。
そして、ワクチンはその処理の仕方によって大きく3種類に分けることが出来ます。

生ワクチン ー 病原体をそのまま使うので「生」ワクチンと言いますが、勿論化学処理によって症状が出ない様に限りなく弱毒化したものです。

不活化ワクチン ー 元となる病原体に化学処理を施すことで、その病原性を完全になくした(不活化した)ものものです。生ワクチンより安全ですが、逆にワクチンとしての効果は弱くなるため、免疫を獲得させるために複数回接種する必要があります。

トキソイド ー 病原体そのものではなく、その毒素だけを取り出して病原性をなくしたものです。これも安全性は高いですが、免疫を獲得させる効果は弱いため複数回の接種が必要となります。

今回このファイザー社が開発したワクチンがこの中のどれに当たるのかはまだ分かっていませんが、少なくともワクチンが開発出来たということは既に新型コロナウイルスの解析がほぼ完璧に終わってコントロールされているということに驚きを隠せませんし、これは素晴らしいことだと思っています。

後は無事に臨床治験を終えて、ワクチンが行き渡ることを切に願っています。

・・・とはいえ、実はまだまだ安心出来ません。理由はいくつかあります。まず現在臨床治験の段階まで進んだといっても、ここからまだ時間が掛かるであろうこと、そして治験が必ずしも上手くいかないかもしれないこと、最後に治験が仮に上手くいったとしても、獲得した免疫がずっと続くかどうか分からないこと・・・これに関してはある程度長期的に経過を見なければならないため、ワクチンを接種して免疫を獲得したからOKだ!とは簡単には言えないのです。

未知のウイルス、未知の細菌の恐ろしいところがこれです。瞬間的、一時的に効果がありそう!と思っても、長期的な結果に対しては全く分からない。ですからそれ以外の検査、治療法(対症療法も含みます)についても変わらず日々改善を目指す他ないのです。

ワクチンの副作用(副反応と言いますが)などの一般的なお話に関しては日本ワクチン産業協会HP(http://www.wakutin.or.jp/index.html)などに詳しく書かれていますので、そちらを見てください。子供に対する予防接種のお話がメインになりますが、基本的には大人も子供も大きくは変わりません。

さて・・・ブログ開始から1週間経って、最低限、今回の新型コロナウイルス感染に関して皆さんにとってとにかくお伝えしたいことを記事にしてきました。

明日からも引き続きコロナ関連のお話もしますが、少し目先の違うお話、特に個人的に外食が多いのと、美味しいご飯やお酒が大好きなこともあって、外食産業がこのコロナ禍の中で営業すれば良いのかなどのお話もしていきたいと思っています。

では。

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